Tebineri

人間。

金色になった傷口

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人生、落ち込んでしまうことも沢山ある。

私は去年、すごく楽しいことも、がんばったことも、悲しかったり悔しかったりして動揺したこともあった。
私は動揺したり、体調がよくないのに頑張ろうとすると、昔は自分の体調が壊れて動けなくなっていて、それが治ったら今は、ものが割れるようになった。
それで去年は大切な、絶対に失いたくない陶器が3つも割れてしまった。
ここにない、修復不可能な砕け方をしたガラスのカップを含めばもう少しある。

急須は、知り合いの方からいただいた大切なもので、絶対に失いたくなかったし、すごく綺麗に真っ二つに割れた。
カップは、母が日本から送ってくれたもので、これも絶対に失いたくなかった。それに、複数個に割れてはしまったけれど、粉々にもならずかなりパカっと割れた。

小さい頃に姉妹で使っていたカメさんのかわいいお皿も、棚に眠ってるの勿体無いな使うよ!とチェコに持って来た矢先、端っこだけなぜか割れてしまった。

というわけで、かねてからやってみたかった金継ぎセットを日本で購入し、持ち帰って、この冬やっと着手した。

 

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金継ぎはすごく時間がかかる。

まず、継いだ麦漆の「乾燥」には湿気が必要、つまり漆は湿気で硬化する。
そしてチェコのカラッカラに乾燥した冬。
うん。まずいね。
なので、段ボール箱に湿ったタオルやキッチンペーパーを置いて湿気を絶やさないようにしながら、丈夫に接着したければ一ヶ月ほど待たなくてはならない。長い。
2週間ぐらいでもいいそうだけど、丈夫になってほしいから待った。カレンダーに登録して待った。

そして、はみ出したとこを彫刻刀などで削り、平らにして、欠けた部分にパテにした錆漆をつけて埋め、それもさらに何日か乾燥させる。
それをまたきれいに削ったりやすったりしてから、弁柄漆というやつを面相筆でスーッと「傷口」に引いていって、それがええ具合に乾いても湿ってもいない時に金の粉を蒔くのだが、このタイミングが鬼すぎる。
急須は大切なもので妥協できなかったので、三度やり直した。。
今乾燥を待っている。

 

で、こんな感じに。f:id:jukiko08:20210427174424j:plain

かっちょいい。

かなり、いやすごく、かっちょいい。

 

何より、割れてバラバラになったりしたものがちゃんと戻ってきたという、驚き。
深く、修復不可能に割れたはずのものが、金色のかっちょいいラインを携えて生活の中に戻ってきてくれたという、すごさ。

これは、新感覚だった。

私は精神力は恐らくS級だけど、心は普通にガラスである。C級だ。
うつわを割ってしまうと、おいらの心のガラスも一緒に砕けていた。
つまりきっと、割れる時というのはそれを象徴してくれてるんだと思う。割れる時はいつもそういう時だから。

前までなら、割れたらもう、あーあ割れちゃった…と悲しみをこらえて、見ないようにして早めにゴミに捨てるぐらいしか方法がなかった。
でも、金継ぎセットを購入できるという素晴らしい世界になり、実際に自分の大切な器を継いでみて、それを普通にまた生活の中で使い始めたとき、新しい感覚が生まれた。

この器たちは、自らがパーンと割れて使い物にならなくなってしまった傷を、そのまま持ってる。
その形のまま。持ってる。それを成形したりすることなく、逆にそれ以上割るわけでもなく、ただ、割れてしまったという事実のまま、かっこいいライン持ちになって戻ってくる。そしてまた、生活の中で生きて活かされていく。

一度割れたらもう終わりだと思ってしまう人というのは、いる。完璧主義の人、自分のやり方しかわからない人。私はそのタイプ。
でもヨーロッパに来て少し変わったのは、「個人個人が違うのは当たり前なんだから、話し合いをして変えていけばいいし、合意できなければそれも仕方ないよ、個人だもの」という考え方。だから、喧嘩したり、悪いことしたりをどちらがしても、話し合いができれば解決ができる。これは、割れたと思った器がもっとカッコよくなって戻ってくる感覚に近かった。もうダメかな、と思った時、何度も折れずに済んだのは、こっちの友達のおかげだった。

そして今年、実際のうつわを自分の手で時間をかけて継ぎ、傷跡をそのまま持って美しく輝いている器を見て、もちろんそれを食洗機に放り込んだりしないし、金剥げてきてないかなーとチェックしたりともっとずっと注意を払うようになったり、時間がかかると分かった以上まず割らないことが大切!なので、ショックを受けたり傷ついている時に「私は割らないわよ!!!」と宣言すると、割れない、ということが分かった。(欠けてはしまったが…。)こういう時はちなみに料理中の不意の切り傷も作りやすいので(精神的には分かりやすい自傷の一つらしい)、切らないわよ!!!!と宣言するとこれも、切らない。

つまり、落ち込んだ時、ショックで辛い時に、無理に普段通り動かないようにするというチャンネルが、長年の苦節を経てどうやら、私に、なんとか、実装されたらしい。。

にっぶ…。

にっぶいねん…本当に…。

はー……と落ち込んでしまう今ではあるが、
それでも、継いだ器がカッコよく
今日も堂々としているから、
これに恥じないように、自分をちゃんとケアしながら、生きていきたいと思う。

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器を継ぐのに、やり直しなんかもしてると2〜3ヶ月ぐらいかかってるわけなんだけど、心の傷も、ほんとはそのぐらいかかってるし、そのぐらいかけてあげるべきなんだろうな。と思うのでした。